逃げることを許さない社会と自殺

 少し重たい話です。


 私はそうだし、皆さんもそうだと思うけど、それが時候の挨拶であるかのようによく「頑張って下さい」と言われる。正直なところ、「頑張る」かどうかなんて個人的な気持ちに口を突っ込まれるのは、違和感がある。言った本人に悪気はないと思うし、「うまく行くといいな」程度軽い応援の気持ちだと思うので、私も食ってかかりません。


 面倒なのは「頑張れ。努力すればきっと報われる」「逃げたら一生後悔する」といった人生訓を押し付けてくる人たちです。同じ人間のあなたに何故そんな神のような未来予知能力があるのか、と本気で思う。あなたはそれで成功したかもしれないが、そうしなかったらもっと大成功してたかもしれない。もしかして、頑張る人はあなたにとって都合がいい道具ですかと勘ぐりたくなる。


 逃げることを知らない、あるいは逃げることを封じられた人が思いつく唯一の逃げ道は「死」です。

 いじめられて自殺する人、休みなく働いた末に自殺する人、事業で失敗して自殺する人、etc。


 自殺する人は本当は「頑張ることに疲れました。もう許して下さい」と言いたいんじゃないかと思う。自殺のニュースを聞く度に「あぁそんなに頑張らずに逃げてもよかったのに」と悔しく思います。それが子供でも大人でも犯罪者でも。

 私が両親に貰った宝の一つが「きついなら止めてよかぞ」という逃げを許容する考えです。


 いじめで子供がする度に犯人探しが始まって、いじめた子供や教師や場合によっては親がテレビで糾弾されます。私はいじめはなくなって欲しいし、そのための努力は必要だけど、なくならないと思っています。だから、いじめられた子供が逃げる場所と気持ちを準備することが肝心だと思います。
 「逃げずに頑張る」ことよりも、まず「いったん逃げて、生き延びる方法」を大人は教えるべきです。他に逃げ道がいくつもあれば、最悪の逃げである「死」を選ぶ人はずいぶん減ると思います。


 自殺の本当の原因は「逃げずに頑張る」ことを強制する、つまり逃げることを許さない社会にあると思います。


                                        以上です。