横井軍平ゲーム館RETURNS

こんばんはuzakadeuです。


横井軍平ゲーム館RETURNS』((SBN 978-4845910502)という本を読みました。いちおう200ページ超の本なんですが、読み物だし、面白かったので、3時間くらいで一気に読めました。


横井軍平さんは任天堂の元開発部長で、ゲーム&ウォッチゲームボーイバーチャルボーイなどを生み出した方です。残念ながら今から13年程前(1997年10月)に亡くなられています。


実はこの本は復刻版です。元の本(『横井軍平ゲーム館』)は1997年7月、つまり横井さんがなくなられる直前に出版されたものです。復刻版が出るまで、中古書籍が八万円くらいのプレミアが付いていたそうです。




さて、本の内容ですが、横井さんの開発したものを年代別に紹介しながら、それぞれについてインタビューした内容を載せています。ただし余計なことにはほとんど触れておらず、それがゆえに横井さんの商品開発の哲学である「枯れた技術の水平思考」が自然と伝わってきます。


枯れた技術の水平思考」って何だ?と思う方もいると思います。私はそうでした。以下に本の一部を引用します。

  • ラブテスター」は、実を言えばただの電流計だ。...(略)...横井氏はこれを「公然と女の子の手を握るための道具」に仕立て上げる。つまり、電流計という使い古された技術を、まったく異質な分野に投げ込んでみて発想する...(略)
  • 「先端技術を用いた商品は当然コストが高くつく。しかも、そこから生まれる商品は、多くの場合他社との価格競争になりがちだ。しかし普及してさらにその技術が枯れてしまえば、ウソのように低いコストで商品が作れることになる。そこで、その技術の使い道にひとひねりを加えて商品化する。
  • ゲームの基本というのは、碁とか将棋であって、あれに色がついていてもあまり意味はない。結局、カラーは最初の見かけの派手さだけなんですね。
  • 専門の技術者というのはね、難しい技術を使わなければものができないという誤解をしている面が多いと思うんです。私がユーザの立場になってものを作りたいと思ったら、ものすごく手っ取り早くつくれるものから考えて行きますね。
  • 私が商品開発をしているときも、技術者にユーザが何を求めているかを伝えるのは簡単です。しかし「ユーザが何を求めていないか」を探し出すのは非常に難しい。...(略)...「ユーザはこう言っているけど、本当のニーズはこうなんだ」ということを技術者に説明するインターフェイスの役目をする人が絶対必要なんです。
  • 私はものを考えるときに、世界に一つしかない、世界で初めてというものを作るのが、私の哲学です。それはどうしてかというと、競合がない、競争がないからです。
  • リハビリなどの世界にゲームの要素を入れると非常にいいという話が出たんです。...(略)...リハビリというのは、毎日同じことの繰り返しであまりみんなやりたがらないんですが、それにゲーム性を盛り込むことで、リハビリがものすごく進む。

どうでしょうか。「枯れた技術の水平思考」が何となく伝わったでしょうか。




この本を見ると、今の日本の製品、つまり高品質で高機能で最先端技術をてんこ盛りにした製品が、必ずしもユーザ目線で作られていないのではないかと思えてきました。


ハイテク日本、貿易立国日本を支える技術者にぜひこの本を読んで頂きたいと思いました。だってたった2,100円(税込)だし、たった三時間程度で読めるのです。

                                  以上です。